Beranda / 恋愛 / もう二度と、冷徹侯爵の花嫁にはなりません / 第15話 逃がさないと言わない男①

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第15話 逃がさないと言わない男①

Penulis: なつめ
last update Tanggal publikasi: 2026-07-24 07:22:48

 西の丘陵地へ向かうための支度は、始めてしまえば意外なほど現実的だった。

 夢のような話ではない。

 逃避でもない。

 箱を一つずつ埋めていくうちに、それはただの「移動」と「生活」の問題へ形を変えていく。

 どのドレスを持って行くか。

 薬草の本は二冊で足りるか。

 筆記具は多めにいるか。

 夜は冷えるだろうから、厚手のショールは何枚必要か。

 雨の日用の靴は新しくしたほうがいいか。

 リリアーナは自室の床へ半ば広げた箱の前にしゃがみ込み、畳んだ衣類の束をひとつ持ち上げては、また置いた。窓の外は晴れているわけではないが、昨日までのような重たい曇天ではない。薄い雲の向こうに日があるのが分かる。春の途中の、まだ心許ない明るさだ。差し込む光は淡く、箱の金具を鈍く照らしていた。

 床の上には、王都に残すものと持って行くものが分けられている。

 夜会用の華やかなドレス。

 伯爵家の令嬢として「相応しく」見えるための飾り。

 必要以上に白い手袋。

 見られるために整えられたものたち。

 それらは、今の自分にはひどく遠く見えた。

 一方で、持って行こうと決めたものは、どれも妙に手
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